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 突き出された剣先が空を切る。
 ゴウは身を低くしてその切っ先をかわしていた。
 わずか数センチ頭上をかすめたその剣を下から跳ね上げる。
 キィン!
 剣と剣のぶつかり合う金属音が響き渡る。
 青空に跳ね上げられた剣が回転しながらキラリと太陽の光を反射する。
 ズサッ!
 ひるんだ敵兵の目の前にそれは突き刺さる。
 ゴウは足元に落ちたそれを抜くや否や、回し蹴りを叩きこんだ。
 完全に無防備な敵兵はもろに食らって、狭い足場から、はるかかなた下の海に落ちていく。
「うわあああああ・・・」
 バシャン。
 そいつは青い海の中に吸い込まれていった。

 逃げる場所のないヤード(マストと直角に交わる、帆を支える横棒)の先でゴウは次々とアビルト兵士を打ちのめしていく。
 一人倒しても後ろからまた新手が現れる。
 敵艦はほとんどが撤退にかかっていたものの、白兵戦になると、情報網が麻痺していて末端の兵士まで命令が下っていない。
 敵の脅威からシナリーを守るまでは、城に戻る事はできない。
 消耗戦になれど、最後まで戦わねばならない。
 まず、今はこの敵艦を沈める事を考えねば。
 ゴウは、この戦闘の行方まで思いを巡らせつつも、死と隣り合わせの戦場で戦いを繰り広げているのだ。
 
 次の敵兵がタックルを食らわせてきた。このまま海に突き落とそうという魂胆だ。
 ゴウは身軽にそれを右にかわす。が、足場はない。
 宙に浮いた体を、それを計算していたかのように、ヤードからでているロープを左手でつかんでいた。
 目標を見失った敵兵がまた、海に落ちていく。
 ヤードの下にぶら下がりつつ、それを目で追って確認した後、宙吊りのまま、右手に持っている剣でロープを切断しにかかった。
 敵兵は次から次へとヤードに登ってくる。このままではキリがないと彼は判断したのだ。
 ブチ、ブチブチブチ・・・。
 ロープが切れる音がする。
 ガラガラガラ・・・。
 ゆっくりとだが、滑車が動き始める音が聞こえてきた。
 そして、ゴウのつかまっていたロープが緩み、伸び始める。
 その反動を利用して彼は中央のマストに乗り移る。
「そこを離れろ!!!」
 味方兵士に向かって、彼は大声で怒鳴った。
 今までゴウの乗っていた、ヤードが大きく斜めに傾いでいる。
「わああああ」
 ヤードに乗っていた敵兵士はひとたまりもなく落下し始める。
 そして船上にいた連中も蜘蛛の子を散らすようにその場から逃げようとする。
「トドメだ!」
 ゴウは片手でマストにつかまりながら、滑車に向かって剣を投げつけた!
 剣はくるくると回転しながら滑車に挟まる。
 動くロープが徐々に剣によって削られていく。
 そして次の瞬間、轟音を立ててヤードが戦場に落下する。
 船は揺れ、甲板に大きなダメージを受け、船員は大混乱に陥る。
 
「よくも我が船を・・・」
 ゴウは、術に集中しようとしている魔道士を見逃さなかった。
 よりにもよって、そいつがかざしている手の先にはエレナの姿が。
 彼女は剣を振るって必死に敵兵と戦っている。魔道士には気がついていない。
 彼はスルスルとマストから降り、エレナに向かった。
 さっき剣は投げてしまった。
 ここからでは敵との距離がありすぎる!
 魔道士の手に赤い光がともった。
 ゴウは、剣をかざしているエレナに勢いよく突っ込んだ。
 赤い光が炎となって空間を突き進む。
「きゃっ」
 炎はエレナにかぶさるようにして倒れこんだゴウの背中をかすめて、消えていった。
 マントを焼く臭い。
「ゴウ!」
 エレナが、まだ立ち上がれずに、襲いかかって来る敵兵の攻撃を受け止めながら叫んだ。
 彼女の背後からも敵兵が突っ込んでくる。
 ドスっ。
 片目を閉じながらエレナが恐る恐る見ると、敵兵が呻きながらスローモーションで倒れる姿が見えた。
 次いで剣を受け止めていた方の敵も、足払いをくらってひっくり返る。
「!」
 ゴウが悪あがきする敵兵のみぞおちに一発叩きこむ。
 そして、彼女はゴウが再び詠唱を始めた魔道士に向かうのを見て、後ろから剣を投げた!
「行け!」
 クルクルと回転しながら剣が空を切る。
 魔道士のローブを一部引き裂いて、背後に突き刺さる。
 ゴウは、油断した魔道士を飛んでかわし、刺さった剣を振り向きざまになぎ払った。
「な・・・に・・・」
 どさっ。
 魔道士が倒れる。
「大丈夫かい、ゴウ!」
 エレナが後ろから駆けよってきた。
「ああ、心配ない」

「申し上げます!」
 息つく間もなく、通信が入る。
「シナリー王宮の魔道士が爆死。敵の作戦は頓挫した模様。アビルト艦隊は撤退!追撃をやめ、帰還せよ!」
 ゴウは、ふぅっと大きく息をついた。
 エレナは飛び跳ねて喜んでいる。
「帰ろうか」
 ゴウはエレナの剣を床に突き立てて、先に自分の船に向かって歩き出した。
「祝杯でもあげなきゃな」
 エレナは床に刺さった剣を引き抜いて、歩き出したゴウの背中をつついた。
 丁度魔道士の炎をくらった所だった。
「ちゃんとアーマーを着込んでやがったか」
 カンカンと金属音が鳴り響いた。
 ゴウは、焼け焦げたマントを空に向かって放り投げた。
 太陽が傾いて赤みがかった空に、白いマントが飛んでいった。
「借りはちゃんと返せよ」
 ゴウの呟きに、エレナがフっと鼻で笑った。
「何だい?返して欲しいのかい?この、何も無い船の上で、乙女にそんなこと求めて」
「何言ってやが・・・」
 反論する間を与えず、エレナが言う。
「ヤダヤダ。これだから男ってヤツは。困るねえ」
 彼女は、ゴウを通り越して、身軽に、駆けて行った。
「ったく」
 舌打ちしつつも、彼女の無事を喜んでいる自分がいる事を、ゴウは認めざるを得なかった。
「野郎共!帰るぜ!シナリーに!」
 エレナが陽気に叫んでいる。
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