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「・・・シナリーが危険だ」
 ヴィンスがやや張り詰めた声で言った。
 隣にいたバヌールは、フッと鼻で笑った。
 その鼻息だけで、近くにいる細身のヴィンスは飛んで行きそうだ。ミャオははたで見ていて思った。
「何が見えた?このままじゃヤバイってのかい?」
 ヴィンスは何かに集中するかのようにしばらく間を置いてから口を開いた。
「術師が動き始めたようだな。ヤツをのさばらせておくと、わたし達の支払い主がいなくなるかもしれないね」
「そりゃぁ、困るね」
 なんたって傭兵たちに振舞ってやらなきゃならないからね。
 バヌールは豪快に言った。まったく、恐れている様子はない。
 ミャオはこの戦場で、まるで恐れを知らないかのような二人の会話に、戦慣れした傭兵の凄さを感じた。
 ミャオだって、今まで危険な目に何度もあってはいる、が、この逃げる場所もない海上でなぜ、こんなに落ち着いていられるのだろう。
「どうしたい?」
 ミャオはバヌールに声をかけられて我に帰った。
「い、いや」
 そこにいるバヌールは、女性なのにたくましく、戦場なのにいきいきとしている。そして、大勢の部下から慕われている。
 彼は、共に行動するようになって徐々にだが、頭でいるその理由が分かってくるようになった。
 窮地でも屈することなく、一枚上の手で敵を翻弄する。
 コイツについて行けば確実だと思わせるほどの器量と策。
 それを兼ね備えながらも、回りの部下に気配りもできる。
 近寄りがたいオーラのようなものさえ感じる。
 ――何だろう、この感じ・・・。
 年上であろうバヌールになぜか妙に魅力を感じる。
 でも、一緒にいたら、一生こき使われそうだ。
 ミャオは、頭をぶるぶる振った。
「なんだい?急に怖気づいたのかい?」
 情けないね。
 バヌールはミャオを茶化すように言った。
「ふん」
 馬鹿にされたような気がして、ミャオは目をそむけて海上を見渡した。


 船は随分シナリー寄りまで来た様子だ。
 アビルトの砲に狙われて一時はどきりとしたが、今はアビルト艦隊の同士討ちにより、この船は無事でいる。
 そんな時、ゴウからの通信が入った。
「ミャオ。聞こえるか」
「ああ」
「これより我が艦隊はアビルトに攻撃を加える!」
 緊張感漂うゴウの声。
「ああ。こっちも大部分がシナリーについた」
「大体の事は斥候眼で分かっている」
 そういえばそんな名前の魔道アイテムが存在したか。今までは王宮に捕らえられていた魔道士の障壁で使えなかったのだろう。
「ゴウ」
 ミャオは、敵に死んでも突っ込みかねない彼のことを気にしていた。
「無茶すんじゃねーぞ!」
「何を今更言っている!戦いは始まっているのだぞ!」
 ・・・そんなことわかってら。
 心の中で舌うちしながらもミャオは言った。
「突っ込むなよ!石頭め!」
「突撃せずにどうやって敵を撃破するんだ!切るぞ!」
 ブツ。
 ・・・切りやがった。あの、石頭め。
 ミャオは小さくため息を一つついた。
 いつもそうだった、ゴウは。だから、将軍にも信頼され、今のポジションに至るのだろう。
 

 
「で、ヴィンス、何か方法はあるのか?」
 バヌールが言った。
「・・・乗り込もう。船では遅すぎる・・・」
 何かを透視しながらヴィンスは言った。
「ここはどうする?敵の大部分は混乱しているが、一部はまだ健在だ」
「大丈夫だ、ゴウ少佐がやってくれる」
 わたしには見えているよ。彼の活躍が。
 ヴィンスは軽く微笑みながら、ミャオに向かって言った。
 まるで心を見透かされたかのようなミャオは、ヴィンスの言葉に、どきりとした。
「わたしの力で、さらに彼に力を与えよう」
 すると、彼はぶつぶつと呪文を唱え始めた。
 長時間とも思える詠唱の後、何かが起こった。
 見えない空間を力が走りぬけて行くような・・・。
 オーブを手にかざす、ヴィンスからは気が発せられている。
「?何だ?」
 それが何なのかミャオには理解できない。しかし、何らかの魔法を使ったのはわかる。
「これで、敵からはシナリー艦隊が確認しにくくなるだろう」
「ほう、お得意の幻覚かい?」
「そうだ、敵からは霧がかかったように、艦隊へ攻撃を加えるのは難しくなるはずだろう」
 ヴィンスはかかげたオーブを懐に戻した。
「行くとしようか、場所はシナリー地下牢。だが、油断は禁物だ。相手は相当な術師だ」
 空間をつなぐ魔法を続けて唱え始める、ヴィンス。
 敵の魔道士も強いと言うが、こんな高度な魔法を続けて使えるとは、このヴィンスという男もかなりの術師なのだろう。



「総員!突撃せよ!」
 ゴウの怒鳴り声が響いた。
 ゴウから命令される前に、エレナは配下の砲撃手に指示を出している。
 魔道士からの障壁から解き放たれた艦隊は、通信機能も回復していた。
「最大戦速!進めえええええ!」
 ゴウの指し示す先はアビルト艦隊。
「了解、最大戦速」
「敵艦隊補足」
「左舷、砲塔展開」
「ギリギリまで引き付けろ!」
 艦隊は大海原を突き進み、敵艦に近づいていく。
「まだだ、まだ撃つな!」
 敵の大砲が船のすぐ近くの海に着弾し、水しぶきをあげる。

「よし!撃てぇぇぇぇ!」
 船団が一斉に火を吹いた。
 先頭にいた敵艦の横腹に風穴を開ける。
 敵船団の一隻が、ゆっくりと、大きく傾ぐ。
「二番艦、被弾!航行に影響なし!」
「続けて撃て!」
 敵艦は明らかに浮き足立っている。
 敵の砲火は狙いが定まっていない。
 そして航行速度が遅い。砲撃戦になったら動いていない方が負ける。
 あっという間に、数隻を海に沈める。
 周囲の敵艦は、向かってくるどころか、退却し始めた。
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