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 しめた。 
 ここはコイツらを利用しない手はない。
 マフラーを手にしながらミャオはいかにして彼らの寝返りを成功させるか、を考えていた。
 さもなくばアビルト軍から向けられた砲身はこの船を木っ端微塵にするだろう。
 たまったものではない。
 こいつらと一緒に海の藻屑になるなんて。剛直で猪突猛進なゴウと違ってミャオは要領よく今までも生き延びてきたのだ。
「で、どうするんです、敵艦は確実にこの船を狙ってますが」
 ミャオは何か考えでもあるのではないかと思いつつもバヌールに現実的な質問を投げかけた。
 案の定、バヌールは豪快に笑い飛ばした。
「全部の船団に、とはいかなかったが、この周辺にいる船団には配下を忍ばせている」
「きっと今頃、砲撃手達はあたふたしているだろうさ」
 さっきまでミャオに剣をつきつけていた奴らも一緒になって笑っている。

「うわぁー」
「何をする!」
 砲撃手達が動揺する。
 味方と思っていたアビルト兵が、急に命令とは違う方向に砲塔を旋回させる。
「やめろ、そっちじゃない」
 とがめるアルビト兵士を軽々と抱えあげたその大男は、そいつを海に放り投げた。
「邪魔するならちょいとお休みしていてもらおうかね?」
 バヌール配下の傭兵達は難なくアビルト兵士に一発入れる。
 兵士はその場に崩れ落ちる。
「貴様!裏切るつもりか!ここはアビルト軍だぞ!」
「それ以上こっちにきてみな!あっちの船に一撃くれてやるよ!」
 大男のそばにいた同じく傭兵の女が叫んだ。

 ミャオの見えないところで、アビルト船団の一部は大騒ぎになった。
 砲台を傭兵達に占拠され、アビルト艦数隻は制御不能に陥ったのだ。
「ハハハハ。まずまずの戦果じゃないかい?」
 バヌールが余裕たっぷりに言った。
 しかし、敵艦は完全に沈黙したわけではない。
 確かに砲塔を奪えは直接攻撃はしてこられるわけではないが、完全勝利とはいかない。
 このままシナリー海軍と結託することに成功しても、消耗戦は避けられないだろう。
 ――ゴウならどうする?
 ミャオは、一人甲板に上がり、ゴウとの通信を試みた。
「ゴウ?そっちはどうなってる?このままやりあうのか?」
 波の音と揺れてはきしむ船の音が聞こえてくる。
 が、聞こえてくるのはそれだけだ。ゴウからの返事は帰ってこない。
「っかしいなー、何やってんだ、アイツ」
 城の中からの得体の知れない魔道士による障壁で通信が遮断されているとは知らないミャオは、連絡がとれないでいた。
 ――肝心なときにこれだ。
 ミャオは見張りの奴から双眼鏡を取り上げた。
 高いマストだろうが、そこは身軽なミャオ、傭兵たちの気づかぬ間に、見張り台に登っている。

「あ」
 ミャオは遠で火花が上がっているのを見て、声を上げた。
「おめぇ!ちゃんと見張ってんのか!ドンパチ始めてるじゃないか!」
「え!?」
 見張り台にいたそいつは、怪訝そうな顔をしている。
「そんなはずはない、向こうに見えるのはアビルトの船ばかりだ、シナリーはまだその向こうにいるはずだ」
「じゃあ、あの火は何だってんだ?」
「火?ちょっと貸せ!」
 そいつは大慌てでミャオから双眼鏡を奪い返す。
 そしてそいつは通信用の管に大声で怒鳴った。
「大変だ!アビルト艦が同士討ちを始めたぞ!」
 ――同士討ち?なるほど、こいつらの仕業か。
「本艦はシナリー海域まで移動する!」
 同時に、勢いよく船員が出てくる。
 バヌールによる、反攻作戦が展開されようとしていた。
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