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 フィリダは何かしら木々の異変に気づいて、辺りを見回した。何か、肌に感じるものがある。
 それは近くで同じように木に登っているムシャバも同じだったようだ。
「なにか、感じる」
 それにムシャバも頷いて、続けた。
「この森は、私たちに何かしようとしている、つまり・・・」
「あ、あれ!」
 ムシャバの言葉を遮ってフィリダは指を指した。もちろん、片手はしっかりと木にしがみついている。
 はるか下方、何かがくねるように動きまわり、そこはまるで茶色い物体が何かしているかのように見えた。
「いや、あれは木よ、木の枝!」
 フィリダの視線の先には、うねるように動き回る木の枝、狂ったように舞い散る葉があった。
 そしてさらに先には。
「何あれ」
 手首と足首を枝にグルグルにされた道化とハンラスが見えたのだ。
「なんでしょうね。一体、どういった原理であのようになるのか・・・、確か、こんな記憶があります。セイローの森には、木の精霊、ノームが宿ると」
 ムシャバは、落ち着いた口調でそう言った。
「ったく、落ち着いてる場合じゃないでしょっ、この場をなんとかしないと」
「何とかといいましても、あそこに辿りつくことが出来れば、どうにかしようがあるかもしれませんが、向こうに行けないからこうして木に登っている訳でして・・・」
 っていうか、そんな話聞いてないわよ!
 フィリダがそう言いかけた瞬間、突然目の前に緑の葉が舞い散った。
 目の前に遮るもののない場所まで登ってきたはずなのに、こんなに葉っぱが大量に落ちてくるのはおかしい!
 そんな思考をめぐらせる間もなく、その葉っぱが、いきなり二人に向かって飛んできたのだ!
 フィリダは咄嗟に近くの枝に飛び移り、ムシャバは法力か何かでその葉を退けた。
 ムシャバのバリアみたいなもので、その葉の攻撃が遮断されているところをみると、葉の攻撃自体はそんなに攻撃力のあるものだとは思えない。
 だが、そんな事を考える間もなく、フィリダのつかまっている枝は、ありえないほど大きく揺れ始めた。
 ムシャバのいるところもそうだ。大きく揺れている。
 どうやら、二人の登った木は、まるで生きているかのように大きくうごめいている。
 そして、道化達を襲った枝のように急に襲い掛かってきた!
「わっ」
 フィリダは、素早い身のこなしで枝の第一撃を回避した。
 立て続けに、枝がフィリダを襲う。
 ここは足場が悪い。何といっても、高い木の上なのだ。避けるといっても、枝から枝に飛び移るしかない。
 そしてその枝も、必ずしもそこにあるとは限らず、うごめいている。
 フィリダは息つく暇もなくうごめく枝から枝へと渡っていく。
 一方のムシャバも、法力で枝を防いでいたが、全部、とはいかなかった。
 ここは木の上、大地さえあれば、法力で退治できたのに。
 油断していたムシャバの足に枝が絡みつく。
 フィリダは、それを横目に、軽々と空中を跳んでいく。
 ・・・どうしたら、どうしたらこの場をしのげる?
 回避しながら、木々をなんとかする事を考えている。が、いかんせん、うごめく木々が足場では分が悪い。
「やっぱり、私一人じゃ、どうしようもないよねっ」
 フィリダは空中でナイフを引き抜き、ムシャバにまきついた枝を切りつけた。
 同時にムシャバの気功砲がそこに命中、枝の束縛から離れることに成功した。
 が、そこは空中。足場がない。
「・・・私としたことが・・・」
 ムシャバがウンチクを言う前に、まっさかさまに地面に向かって落下。
「あー」
 フィリダが枝を除け、ナイフで攻撃しながらムシャバを目で追った。
 
 その瞬間、何かのエネルギーに包まれてムシャバの落下が停止した。
「おっさん、やるときゃやるじゃねーか」
 めずらしく、道化がハンラスをほめた。
「ふん。元王宮の大魔導師様をなめてはイカン」
「え?何だって?」
 道化が聞き返すと同時に、ハンラスが術に集中していたのを、ふとやめてしまった。

 ドスン!
 ムシャバが、急に、地面に落っこちた。随分地面に近かったから、怪我はないようだ。
「いたた。私としたことが、あそこは木の上だという事実をつい忘れてしまい・・・」

「しょうがないな、このままだと拉致があかない。いくらロッドが安物とはいえ、無くすのも惜しいけどな」
 ハンラスは言うと、腰に無造作にさしていたロッドが勝手に浮かび上がった。
「おっさん、何をする気だ」
 木にまきつかれて動けない道化は、ロッドを目で追った。
「この森全部を敵に回すのもイヤだが、一か八かやってみよう」
 ロッドは空中に浮かび、光りを放っている。
「森は、火がニガテだ」
 ハンラスは何らかのスペルをつぶやいている。
 と同時に、ロッドが次第にオレンジの光りを放ち始める。
 徐々にエネルギーが空中のロッドに向かって凝縮していく。
「なるほどな、火の魔法か」
 道化は静かに、木々がやられてひるむ隙を狙うことにした。
 その瞬間がいつになるのか、タイミングを計って、準備している。
 やがて、エネルギーの塊になったロッドは、オレンジから赤に染まる。
「燃えよ、灼熱の小人たち!灰燼と化せ!」
 一気に空中でロッドがバーストして、あたり一面が赤く光った。
 その瞬間、木々の動きが一瞬だけ止まった。
 二人はその瞬間を逃さず、枝から脱出する。
 そして、朱に染まった中、木々が急に暴れ始めた!
 まるで、炎に驚いて逃げ惑うかのように。
「うおお、危ねえ!おっさん、なんだよこれ!」
 暴れ狂う枝の中、二人はその場から離れるかのごとく、走った。
「あれ。こんなはずじゃなかったんだけどなぁ?」
 走りながら、ハンラスがぼやいた。
「じょ、冗談きついぜ、おっさん!」
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