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 その「穴」を抜けると、今までとはまるで違った景色に変わっていた。
 町が整然と並ぶイシューにいたはずなのに、空気が違う。
「これが魔法の力なのか・・・」
 道化師があたりを見回しながら言った。
 一行は、緑の草の生い茂る大地に足を踏みおろしていた。
 そこには、見たことのないような花が咲いていたり、キノコが生えていたりする。
 花には美しい色の蝶が舞っている。
 蝶以外にも、耳を澄ますと甲高い鳥の声や、野生の生き物の声が響いてくる。
 そして周辺は、巨木が所狭しと生えている。根元にはコケがびっしりと群生し、枝には太い蔦が絡みついている。
「マイナスイオンね」
 フィリダが空気を胸いっぱい吸い込んだ。
 今までは港町独特の乾燥した空気だったが、急に湿度が増したようだ。肌に当たる空気がしっとりとして重く感じる。
「水の音が聞こえませんか」
 ムシャバの指差す方向を一同が見ると、太陽の光りもさえぎるような木々の向こうに、小さな池ができているのが見えた。
 そこに、石を伝って流れ落ちるわずかな水が、ちょろちょろと音を立てている。
「シルフィーナちゃん、お水だよー♪」 
 ハンラス14世がラクダを連れて、水辺に走っていった。
 水は透き通っていて、流れてくる水も、湧き水であろう事が想像できた。
 周りを緑のコケに囲まれていて、ゴミひとつない。
「キレイなところね」
 フィリダが、空気を胸いっぱいに吸い込みながら言った。
 
「・・・何か、忘れてませんか?」
 今までの喧騒を忘れて森林浴を楽しんでいる一行を、急に現実に引きずり戻したのは、ムシャバ。
 池の水を飲んだり、顔を洗ったりしている一行が、ふと手を止めてムシャバを注目した。
「ああ、忘れてるよな」
 道化師が、水辺から立ち上がって言った。
「俺たちをここに運んできたおっさん、だろ?」
「そうです、穴が消えると同時に、消えましたね」
 ムシャバが、一行が森の中に出てきた場所を指差した。
「確かに。あれは空間と空間をつなぐ、転移魔法。魔法の中でも、攻撃魔法とは違う技術が必要になってくる」
 ハンラスがシルフィーナちゃんに水を飲ませながら言った。
「あの魔法、短距離でも大変な魔力を必要とする。あれが使えれば、連中が持ってたコショウ。アレを運ぶのに労力はいらないし、商人もわざわざ歩いてくる必要がない」
「おっさんは使えねーのかい?」
 道化師が茶化すように言う。
「私が使えたら、わざわざシルフィーナちゃんと旅はしてないだろ。そもそも、変な連中に追い回される前に、その魔法を使って逃げてるに決まってる」
「ちぇ、確かに」
 道化師は、木の幹をコツコツ叩きながら、唾を吐くマネをした。役にたたねーなー。と聞こえるようにつぶやく。
 足元にあった小石を投げつけるハンラス、それをひょいっとかわす道化師。

「あのー、話が脱線してませんか?」
 道化師とハンラスがもみ合いの喧嘩をおっぱじめる一歩手前で、ムシャバが割って入った。
「まず、ここがどこなのかを探らなくてはなりません。そして、セイローの森へ行くことが目的だったはずではないですか」
 ムシャバが少々キレ気味に言った。全く、自分たちの置かれた立場ってものを考えてないんだから。
「じゃあ、ここがどこだか、わかるの?アンタ」
 フィリダが言った。
「それでしたら、これから調べようと思いますが」
 ムシャバが両手を合わせると、お経を唱え始めた。
「むーん。東に、港町。あ、これは、先ほどまで私たちのいた、イシューの町ですね」
「ってことは、俺たちは西に飛ばされたってことかい?」
 道化師が、またすぐ隣の木をコツコツしながら言った。

 ごおおおお・・・。
 地鳴りのような音。だが、気にするほどではない。

「おっさん、本屋で立ち読みしてたんじゃないの?」
「あー、そうそうそう」
 セイローの森は、イシューから西の方向にあったはずだ。
「どうせエロ本ばっか読んでて調べてないのね」
「そういうフィリダちゃんは知らないの?」
「知ってたら聞いたりしないわよ。道化、道化は?元宮廷にいたんじゃないの?」
「宮廷にいたからって、その森の事をいちいち把握してるわけじゃ、ねーしなっ」

 うごごごごごごご・・・。

 ものすごい地響き。まるで大地が叫んでいるかのような・・・。
「な、何?」
「うわっ」
 道化師のコツコツしていた木揺らいだ。
 木の葉はガサガサ揺れ、まるで生きているかのように枝がうねっている。
 
 そして
 急に大きな口を開けたのだ!
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