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「こういう時は、アレしかないっ!」
 道化師の目配せに、仲間たちが気付く。いずれ劣らぬ変わり者の集団は、道化師の意図まではわからないものの、彼が何かしようとしていることを察した。
 道化師は突然空を指差し――
「あっ!! 何だアレはっ!!!」
 彼らを取り囲んだ連中が空を見上げる。
「くらえ、癇癪玉あっ!!」

 ――スパパパパン!

 火薬の臭いと共に、道化師たちの周囲に大量の煙が充満した。
「走れ!」
 使い古された目くらまし。しかし、取り囲む人数の多さはこちらにとって有利に働いた。簡単にパニックに陥ったのである。
「なんなのよもうっ!」
 道化師の合図とともに一斉に駆け出す一行。

 ――ひゅるるるるる……

 空から聞こえる、耳慣れない高い音。いや、どこかで聞いたような――
「な、なんかこっちに近付いてるぞ!?」
 早くも息を切らせつつ、ハンラス14世が不安げな声を漏らす。
「ちょちょちょっと、この音ってもしかして!?」
「伏せ――!」
 喚くフィリダを道化師が、走り続けるハンラス14世をムシャバが、それぞれ背中に飛びかかって覆い被さる。
 シルフィーナちゃんも膝を折り、地面に腹をつけて伏せている。

 ――ドーン!!

 背後の地面に、見事な花火が半月状に花を開く。
 さきほど自分たちを取り囲んだ、正体不明の一団のうち数人が吹き飛ばされている。
「たーまやー!」
 条件反射のように叫ぶ道化師。そこに――
「どわっち!!」
「……」
 降りかかる火花。ムシャバは法力でも使っているのか、彼に届く前に火花が消えている。彼の口からはお経と思しき言葉が漏れている。
「なんか、私の体の上でお経を聞かされると……自分が生者か幽霊か微妙に迷うんだけど――あちっ!」
「お疑いのようでしたので一寸お経を止めてみました。良かったですね、生きていて」
「貴様に法事を頼むことがあっても、お布施は絶対に用意せん!」
「ほほう。異教のハンラスどのが、私の紹介で我がドーブ教に宗旨替えをしてくださると? それだけでも私にとっては充分に得……いえ、徳を一つ積むことになるので有り難いです」
「この正直坊主め! あちっ! 宗旨替えは単なる物の譬えだ。もうわかったから、結界張ってくれ……」
 しかし、道化師の方は少なからず火花のシャワーを受けたようだ。全く火花の被害を受けなかったフィリダが、背の上に覆い被さる道化師に声をかける。
「ど、道化師あんた……」
「申し訳ない。結界は私とシルフィーナどのを包むのに精一杯で。なにしろシルフィーナどのには金目の荷物が――」
 落ち着いて解説を始めるムシャバを遮り、再び道化師が指示を出す。
「走るぞっ!!」

 ――ひゅるるる……

「またかよっ!!」
 今度は少し離れたところに“着弾”する花火。
「なあ、これって気のせいか――」
「あたしたちを逃がそうとしてるとしか思えないわね」
 果たして道化師たちの想像を裏付けるかのように、彼らの目の前に手招きする男が現れた。
「こちらです! ここに入れば、連中から逃げられます! あと10秒くらいで“道”が閉じてしまいます! 急いでっ!」
 男が叫んでいる。カーテン状の幕を手で開いているが、その向こうには森が見えている。魔法で、どこか遠隔地に繋がっているのだろう。
「どうする?」
 罠かも知れない。道化師の問いに含まれる言外のニュアンスを承知の上で、ハンラス14世が答えた。
「相談するまでもない! 私たちごときをあんな大勢で取り囲むような連中に掴まったら、7日以内に解毒どころじゃなくなってしまう!」
 決断した。
「世話になるぜ、知らないおっちゃん!!」
 道化師たちは、男に手招きされるまま、幕をくぐって走り抜けていった。
 最後に男が幕の中に入り、閉じると――そこは元の殺風景な辺境の街道に戻った。

「くそう、逃げられた」
「あわてるな、行き先はわかっている。ひとまずおかしらに報告だ」
 言い残し、十数人の男が走り去る。残る大勢はぴたりと動きを止めた。あの泥人形――オートマトンだったのだ。
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