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 「で?」
薄ら笑いを浮かべたフィリダが云う。
「買い叩こうって云うの、このあたし達から?」
場所は卸問屋の奥まった部屋。
いかにも寄せ集めの、有象無象の彼女たちと対しているのは、百戦錬磨の主と番頭だ。
「買い叩くわけではございません、滅相もない」
本心を見せない、柔らかな笑み。
「それでは私の品物が悪いと云いたいのですか?」
ハンラス14世の反撃。
流石に商人、こうした応酬には慣れた様子だ。
「私はコウトンから遥々やってきたのです。なまなかなものを商うつもりはございません」
「しかし―――見れば貴殿たちは何やらお急ぎのようですが」
足元見られたか、と道化が舌打ちをしかけて、ムシャバに眼で制された。
「私どもとて、決して買い叩くなどそう云うつもりはございません」
ですが、と番頭が続けた。
「このご時世、あまりにもぬるい商売をしていては、立ちいかなくなるのでございます」
主がだめ押しで後を引き取った。
「ですから、先ほどのお値段でなければうちでは扱いかねます」

 「どうする?おっさんがいつも納めてる店はそんな遠いのか?」
商人はうーん、と唸った。
「遠いと云うよりは、ジクテン王国へ向かう方向と真逆なんだ」
「それはきついわね」
苛立った声でフィリダが云った。
余程腹にすえかねているのだろう。
結局ハンラスはあの店で半分の荷物を手放した。
本人は動くのに邪魔だからな、と笑ったが、痛手であることは誰の目にも明らかだった。
ただし金額的に、余裕はない。
ポーションを人数分、最低限の量を買うので精いっぱいだろう。
「かといって、そのあたりのお店では足元を見られますし」
ムシャバがため息をついた。
「確かに、結構ぐらついてきてるからな。商人としてはよく分かる」
資金難。
その言葉が彼らに重くのしかかる。
「なあ、そのポーションはそんなに高いのかよ?」
「他の一般的なものに比べれば、若干値が張ります」
ふむ、と道化が考え込む。
しばらく考え込んだのち、彼はぽつりと云った。
「大道芸で人集めたら稼げねえかなあ?」
他の三人は何を云っているんだ、と云った眼で道化を見た。
「…失礼ですが、あなたは一回でどれだけ稼げますか?」
「俺?普段か?大体一週間は何もしなくていいくらいかな、多分」
つらっと道化が云った。
ハンラスが微妙に仰け反り、フィリダが胡散臭そうな眼で睨み、ムシャバは絶句した。
「…なんだよ」
足んねえか?と道化は眉を寄せた。
ハンラス14世がいやいや、と云った。
「結構腕がいいんだな、普通毎日毎日何回もやってかつかつだろうに」
「ああ、一応―――なんだっけ、『御用達』?だし」
そういうと人集まるぜ、と道化が笑う。
「大道芸は大体何でもできるからさ、他のやつらより一回が長くやってるし」
フィリダが強めに道化の腕をたたいた。
「あんた、そう云うのは最初に言いなさいよね」
道化がおお怖、とおどけてみせたのを見て、一行はくすくすと笑った。
 
 「楽勝」
稼ぎを袋に詰めたものを余裕で持ち帰ってきながら、道化が云った。
「ほら、早くこの国出ようぜ、早く準備して」
「何故です?」
「うん、俺宮廷から追われてるし」
俺の場合、稼ぐためにはどうしたって目立つだろ?だから早く移動しねえと。
道化が云うまでもなく、一行は必要な物をすべて買い付けてラクダにくくりつけ、素早く移動を開始した。
―――はずだったのだが。
「何で国境のこの辺りで足止め食うのよ」
国境は治安が悪い。世の常である。
ただし、こうも大勢の人間に囲まれることは、おそらくそうそうない。
「服装もきちんとしておりますし、食い詰めた者ではないようですね」
ムシャバが落ち着いた声で云った。
「ギルドでも見たことない顔よ」
フィリダが油断なく構える。
「私の商売敵でもない」
そんなのはいないからな、とハンラス14世が嘯いた。
「待て、俺を追ってるのは王国海軍だからこんな変な奴らじゃない」
道化が慌てたように弁明して―――人の輪がじり、と狭まった。
「誰かこの者たちに心当たりのある方は?」
ムシャバの言葉に応じる者は一人もいない。
ああ、とムシャバが溜息をついた。
「面倒なことになりましたね」

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