FC2ブログ
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 口笛を吹きながら余裕の表情で鉄扇を扇ぐ、謎の道化師、肩をすくめるフィリダ。
 古い建物がひしめき合う狭い路地に、闇の商人たちの気配がざわめきあう。
「それにしても、奴ら一体何者なんだろ?」
 フィリダは前方に注意を向けつつ、横目で謎の道化師を見やった。
「胡椒。ね。その辺に訳がありそうな気も・・・」
 道化師の答えを聞く前に、フィリダは先に自分でつぶやいた。つぶやきつつ、何か、邪悪な気配を感じて口を閉ざす。
 道化師も、余裕で仰いでいた鉄扇をふと、とめて、気の方向に注意を向ける。
 何かが一点に集中していくような緊張感。
 そして、民家のひしめき合う中に、空間の歪みが生じる!
「何よ!あれっ」
 フィリダは、見たこともない怪現象に、思わず声を上げた。
「あ、あれは・・・」
 道化師もさすがに、余裕たっぷりではいられなくなったらしく、身構えている。
「ヤバイぜ、あれ!」
 空間はますます激しくうごめき、閃光をともなって揺れ動いている。
「何よっ!何よあれ!」
 やがて、空間からは二階建ての民家ほどもある、何かが現れると、歪みは一瞬にしてやんだ。
 空間から現れたそいつは、筋肉隆々で茶色の肌、頭部は牛、大きな角があり、牛の尻尾が生えている。両手には、大きなアックス。
「お、思い出したぜ・・・あれは、確か、「召喚」ってヤツだ」
「お、思い出してる場合じゃないでしょ!あんなのにやられたらひとたまりもないわよ!私、帰る!」
 フィリダは、さっと背を向けて牛の化け物、ミノタウロスのいない方向に向かおうとした。
「おっと」
 しかし、行く手を阻むように出てきたのは、柄の悪い、闇の商人たち。
 ゴーン!
 轟音と同時に地響きがする!
 ミノタウロスの振り下ろした巨大なアックスが、民家を粉々に吹き飛ばしたのだ。
 オオオーーー!!!
 ミノタウロスが斧を振りかざして、天に向かって声を上げている。その声は、地面を震わせ、二人の体の芯まで響き渡るような不気味な音だった。
 町の人々は、何事かと集まってきたが、牛の化け物を見ると、蜘蛛の子を散らすように逃げ惑った。無力な人間には何も通用しないような、そんな威圧感さえ感じられる。
 フィリダや道化師の横を町人が必死に走り、逃げていく。
「こいつらを」
 フィリダは言いながら、闇の商人を一撃で沈めた。
「片付けてる場合じゃなさそうね」
 イヤだね、こういう悪趣味なのは。道化師も言いながら、行く手を阻む輩をなぎ倒す。

「おおっと。乱暴はよくないよ、お譲ちゃん」
 逃げ惑う人々がいなくなって、ぽっつりそこに残っていたのは、いかにも旅の商人らしい、砂色のローブをまとった中年の男だ。手には手綱を引き、その先には荷物をたくさん積んだラクダを連れている。
 あ、あれを見なさい、あれを!乱暴がどうのって言ってる場合じゃないでしょう!と言いかけたフィリダは、ミノタウロスの家を破壊する轟音に、耳をふさいだ。
「おい、早く離れようぜ」
 道化師は身軽に路地を走っていく。
「いいのかね、あれをあのまま放って置けば、この辺りはみんな更地になっちゃうよ」
「おっさん!んなこと言ってると、あれに踏まれてぺしゃんこになっちまうぜっ」
「そうそう!私たちは関係ないもーん!」
 ミノタウロスは、明らかに家を破壊しながら、こちらに向かってきているようだ。
「無関係な人々があれに殺されても、知った事ではない、と、そう言いたい訳かね」
 商人は目深にかぶったフードをまくりあげた。
 オールバックにした黒髪、彫りの深い顔、豊かな口髭。そして二人を射抜くような強い眼光。
「・・・あれは、何者かが召喚した化け物だ」
 彼は、二人に向かって静かに言った。
「という事は、召喚した本人を倒せばよろしい」
「なるほど、ね」
 道化師は不敵に笑みを浮かべている。
「またまた、おもしろい事を考え付いてくれるぜ」
「あの、牛、なんとかしないと、あそこにはいけないし、近づいてくるし!」
 二人はほぼ同時にまくしたてた。
「よろしい。私が、あの牛の動きを封じれば、君達が後はなんとかするのだな」
 言うが早いが、商人は、ローブに隠れたロッドを頭上に掲げた。
 そして、何を言っているのかわからない、呪文を唱える。
 気が、一点に凝縮されていくのを、二人は感じた。この感じは、ミノタウロスがどこかから現れた時とよく似ている。
 やがてロッドを掲げた男の周囲を青い光りが覆い、ロッドを振り、指し示した方向に青い光りが伸びていった。
 ミノタウロスの動きが一瞬止まった。
 かと思うと、氷の粒がミノタウロスを覆っていく!
 太陽の光りに反射して、その粒はキラキラと輝いている。
「この魔法にはあれを倒すだけの力はない。今のうちに早く奴らを片付けるのだ」
 うん、イマイチな決まり具合だな。早くしないと氷が解けちゃうかも・・・。
 男はつぶやいた。
スポンサーサイト
Secret

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。