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2008.12.20
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 あたしは、そいつらの頭上、高い塀の上に飛び乗った。
 もちろん、奴らには気づかれないように、ね。
 あたしだって、盗賊だ、ギルドの中でも身軽なほうだ。
 奴ら、小さな布袋を持っている。そして、手には札束。
 やっぱりね、思った通りだ。奴ら胡椒の密売してる。
 それにしても、一体どこのどいつがこんなことしてるんだろう?シナリー一帯を取り仕切っているのはうちのギルドだっていうのに。
 あたしは、奴らの脳天からかかと落としを入れてやろうと身構えたけど、ふと前の事件が脳裏をよぎった。
 あの胡椒のせいで、エライ目に会わされたんだった。
 
 ある日、あたしは、胡椒を密輸しようとしているところを見かけて。
 そのおかげで、道化のミャオや、商人のハンラス、坊さんのムシャバと出会うことができたのだけれど、その胡椒にはカラクリがあって。
 ある薬草を煎じて飲まなくては死んでしまう、という魔法がかけられていたんだった。
 それで、あたし達はシナリー国境のセイローの森、ってところに薬草を取りに行くハメになっちゃって。
 とんだ迷惑だよね、その胡椒。
 結局、どこのどいつがそんな魔法をかけやがったのかは、わからずじまい。
 ミャオ達も何にも知らない様子だったし、あの後みんなバラバラになっちゃったし、原因は何だったのかイマイチよくわからないんだよね。
 後で、ギルドで聞いてみたけど、どうも、うちのギルドに喧嘩を売ろうとしてる奴がいるらしい、ってことは分かったんだけど、それが直接関係しているのかどうなのか、ハッキリしない。
 
 とまあ、そんな事がまたあっちゃたまらない、と思ったから、奴等を叩きのめすのをためらってしまった。
「へへへ、いい稼ぎになるぜ」
 薄汚い男が言った。
 その時。
 あたしも気がつかなかったんだ、何者かがそこに現れたことに。
 いつの間にそいつが現れたのか知らないけど、そいつは薄汚い男たちの後ろに立っていた。
 このあたしに気配を隠して近づくとは、並みの奴ではないね。
 そして、そいつは、不気味な笑みを浮かべながら、右手を振った。
 右手からは、何かの光る粉が散り、男たちに降りかかった。
「あん?」
 男たちは、ようやくそいつの存在に気がついて、振り返る。
 光る粉はゆっくりとした速度で、まるで雪のように振る。それが何なのか、あたしにも理解できなかった。
 粉を振るったその男は、何も臆することなく、白いマントをなびかせている。顔はフードでよく見えなかったけれど、風に吹かれた青い髪がフードからこぼれている。
「やろうってのかい?」
 薄汚い男たちはにたにた笑いながら、手をボキボキならした。
 それに対して、細身の白マントも、負けずと人差し指をその男たちに向けた。
 一体何のつもり?
 次の瞬間、光る粉が、青白く光った。
「うわっ、何しやがった」
 青白く光る粉はやがて膨張し、重力に引かれ下に落ちていくと、今度はスライムのようなドロドロになって地面に広がった。
 地面がやがて青白くなる。薄汚い男たちに降りかかった粉も、同じように青白いドロドロになって、こびりついた。
 奴ら、何が起こっているのか理解できない、というような顔をして、仲間たちの顔を交互に見ている。
「フフフ」
 白マントの男は、不敵に笑いながら見たその視線の先は!
 あたし!
 うっ。
 一瞬、ドキっとしたけれど、あたしはそいつにウインクをして見せた。
「はぁい」
 白マントの男の冷たく光る青い目があたしを放さない。
「腐る」
 え?
「全てが、腐っていくのだ」
 何?
「あのっ」
 あたしが何か言う前に、そいつは目の前から、消えた!
 前にみた、空間をつなぐ術だろうか。
「わっかんないなー、何なの、アイツ」
 塀の上でつぶやく私の下では、小さな騒ぎになっていた。
 男たちが、何やら楽しそうにさわいでるわ。
 青白いスライムにとりつかれたそいつらは、スライムを引き剥がそうとしてじたばたしている。
 あっほらしい。あんなもので。
「溶ける!なんだこれは!」
 溶けるの?本物のスライム?
 粉がスライムになるなんて、おっもしろーい!
 男たちの足元に生えていた緑色の草も、青白いスライムにまかれて、どんどん色が茶色に変わっていってる。
 溶けてるってよりも、枯れてるんじゃない?あれ。
「痛てぇ!」
「助けてくれ!」
 なんだろう、この鼻をつく臭い。
 まるで何かが腐ったような・・・。
 あ・・・。

「腐る」

 さっきの白マントの男が言った言葉を思い出した。
 まさか!
 あれにつかまったものは腐っていくの?
 じゃあ、あの薄汚い男等も・・・。
「早く、ギルドに報告に行かなくちゃ!」
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