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「何故お前のようなものが存在している?」
彼女は私に問うた。
私もわからない、気付けば存在していたのだ。
彼女は目を細めた。

まっすぐこちらを見つめて――まるで全てを見透かすように私を眺める。
その瞳は赤く、吸い込まれそうなほど美しかった。

「・・・そうか、成程な」
彼女はそう呟くと、机から降りた。


窓から、風が流れる。
彼女の長い髪が風になびいた。
「一つ、忠告しといてやろう」
彼女は何かを面白がるように、口の端をあげた。

「お前はここから出られない」

意地悪な微笑み。
何かを知っていて、それでいてそのことを言わず、ただ、干渉する、
「世界のことわりから抜け出た存在。それはここからは出られない。世界がお前を認めぬ限り、お前はここから出られない」
そんな者の、微笑み。

彼女はまた、窓の向こうをみた。
青い空の上を雲がすべる。

「もう一度問おう、お前の名を教えろ」
赤い瞳が、輝く。

「世界のことわりに認められたければ、だがな――・・・」
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 ふと、足を止める。
さっきまで走っていた背後の道、そこに何か居るような気がする。でも、何かは分からない。そんな気持ちが頭の中を渦巻いている。
 また足を動かし走り出す。
 その疑問の正体は分からないまま。


 そういえば、自分は自分がどこから来たか知らない。気がつけばそこに居た。只それだけ。
 しかし、自分はそれでいいと思っているし、この存在を咎める者もいはしない。
 だから自分は存在していられるのだろう。とりあえずそう解釈しておく。
 己の存在を咎める者が現れるまでは。


 走っても走っても変わりのない廊下に、その風景を壊すものが現れた。彼女の部屋のものとは違うが、何の変哲もない、木の扉。大きさは人が一人通れるぐらいで、これは彼女の部屋と同じ。
 それを思ったと同時に、彼女の名前を知らないことを思い出す。
 彼女はどんな名前なのだろう。最早聴覚以外のほぼ全てを失ってしまった彼女が、生まれた時に。まだ愛という名のゆりかごに包まれていた時に渡されたものが知りたかった。
 そこにあったドアを通る。
 そこにいたのは、女。
 それはあの部屋にいた彼女とは違うが、それでも普通の人間ではない雰囲気を醸し出す女だった。
 机の上に座るその姿、流れるような黒い髪、その姿はまるで、鴉だった――――――。

 その彼女は此方を見、そして私の姿を見つけたように焦点を合わせるとこう言った。
「お前の名は?」
 それだけしか言わなかったが、それだけで彼女の一面が見えるようだった。
多大な威圧感があり、しかし艶やか、優雅さを併せ持った人で、普通の人間ならきっと見惚れてしまうであろう人だ。
 彼女の質問には答えなかった。
 答える必要もないだろうし、答えたところで何になるというのだろう。
 それより、今はあの音を止める方が先決だ。
 そこから立ち去ろうとした時、彼女が発した言葉に、私は思わず立ち止まる。

「お前、この世の万物じゃないな。」

 それが存在について疑問を持っていた私にとって、求めていたものかは分からない。

 だが確実に。

 彼女は、何かを知っている。
彼女はある夜、あの音で目を覚ます。
「またあの音だわ…」
凡人では聞こえない音を聞き取る、それが彼女の耳だった。
しかし、その音は正体も分からない、とても恐ろしい音。
彼女はその音を非常に恐がっていた。
「…?何かしら、あの音の近くに誰かがいるみたい」
彼女はしばらくして体を動かそうとするも、いつもの通り動くはずも無く、ため息をつく。
ふと、彼女はふと顔をあげて一つの言葉をつむぐ。
「ネコ…さん?」
彼女はある日出会ったモノの足音を見つけた。


なぜまたココに来てしまったのだろう。
彼女を助けに行くはずだったのに、
どうにも彼女の事が気になって、再び足を運んでしまった。
ココに来た時、彼女はまた何かに恐れていた。
いや、“あの音”に恐れていた。
「ネコさん、また来てくれたんですね」
彼女は微笑む。
その笑顔に心が温まる。
彼女の体はまだ強張っている。
おそらく“あの音”の所為なのだろう。





なら、何故ココに来てしまったのだ?


ふとそんな疑問が頭に浮かぶ。
今、彼女を救うためにこの身はある。
彼女を救うためには“あの音”をとめるほかないのだ。
なのに何故ココに居るのだ?
今すぐココを発たなくてはならない。
彼女のために、
あの忌まわしき音をとめるために。

「ネコさん、また行ってしまったのですね?また遊びに来てくださいね?」

彼女は静かに言葉をつむいだ。
この身と言えば、
ただひたすら彼女を『音』から救うために走り続けていた。
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